幼馴染に恋をして(心愛ver)

私は放課後、翼が部活を終えるのを教室から見ていた。
合気道の部員何人かが、合気道の道場がある棟から
校門に向かって歩いているのが見えた。

私は慌てて教室を後に追いかける
上から見た時は何人も居た部員も、
今、私の前を歩いているのは翼、藤原、それに噂の女子中学生の三人・・

彼女、部活合気道で一緒だったのか・・

藤原を真ん中に歩いている姿は、私が以前藤原とココアが
一緒に登校していた時の違和感と同じだった。
藤原は彼女がを会話に参加しなくても気にも留めていない。
それならば、ココアがそんなに不安に思う事でも無いのかも・・
噂通り親戚なのかもしれない・・

そう感じながら私は三人から一定の距離を保ち、
翼が一人になるのを彼女を観察しながら待つ。

彼女は肩より少し長いストレートヘアーの黒髪で
色も白くアーモンド型の大きな少しキツイ目が印象的。
ココアがフアフアした女の子なら
彼女は少しキツメな美人さん・・
ココアとは対極に居る子だと感じた。
(そりゃ、少しキツイ性格じゃないと王子と平然と登校出来ないだろう・・
鋼のメンタルの持ち主だよね)と心で呟く。

そう思いながら淡々と後ろを歩いていると
彼女が翼に向かって笑った
翼も何かを話している
その様に私は胸がチクりとした
ココアが喜ぶように藤原とは何も無いのなら翼とは?
もう一度胸がトクンと跳ねた。
翼は彼女と親しい。

部活で一年間一緒に居ての親しさでは無いような
雰囲気を感じたのは女の感?かもしれない。

私は自分の中に巣くった嫉妬という感情に戸惑っていた。

ココアの為に、ここに居るはずなのに、
翼に問いたいのは違う事だった。
今、この瞬間 翼と彼女の遣り取りに思いのほか傷ついていた。
私はそんな気持ちと戦いながら、彼らの後ろをトボトボ着いていく。

駅前の信号で止まった時、
頭を大きく揺らした彼女の口元に僅かに髪の毛が掛かる、
それに気が付いた藤原が右手で髪の毛を掬い、それを彼女の耳に掛ける。

そう とても自然に・・それを彼女も自然に受け入れていた。
その時の藤原の笑顔に私は愕然とした・・
そこで笑っている藤原の顔は、初めて見る藤原じゃない藤原の顔だった
その後も藤原は彼女の後ろの髪の毛を一房持ち上げて
ハラッと落としては持ち上げる仕草を何回かしていた 
私は気が付いた
彼女の髪の毛は藤原にとっては肌なのだ
今、藤原は彼女の肌に触れているのだ
・・刹那・・
彼女もそして翼もそれを知っている。

この瞬間に出会わなければココアと藤原は
紆余曲折を経て最終的には結ばれると、
脳内トリップ好きの私は描いていたが
それは永遠に実現されない事が伝わった。

翼が彼女と・・と言う事にならない安堵が拡がる一方 
ココアの気持ちが報われることが無い事を
どう話せば良いのか解らなくなっていた。

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