幼馴染に恋をして(心愛ver)

9月になると体育祭、学園祭、音楽会とイベントが目白押し。

最後の行事である音楽会はクラス単位の合唱コンクール。
1日を費やし中1から高3まで発表する。

父兄も鑑賞が出来るため、生徒は基本的に教室のモニターでの鑑賞になるが、
中間テスト4日前と言う事もあり自習だった。

全ての学年が終わり、校長先生の顔がモニターに映し出され、
閉会と思いきや校長先生が
「今年は最後にサプライズがあります。昨年から打診してきましたが、
昨年は叶わず今年、漸く実現しました。
当校にピアノコンクール 金賞受賞者が2名おります。
その2人の連弾曲をお聴き下さい。
 高校1年 藤原 海斗君、中学2年 森 杏那さん」

教室で思い思いの事をしていた全員が、モニターに釘付けになった。
舞台には何時の間にか2台のグランドピアノが運びこまれていて、
その前に立つ二人。
お辞儀をして弾きだす・・
ピアノを習っていない私ですら、
2人が奏でる音色の美しさに引き込まれた
優しさと強さと激しさを奏でる2人に、誰もが息を呑んだ。

弾き終わり、お辞儀をして2人で目を合わせたその姿は、
小さな画面越しでも親戚では無い事が伝わる。

息が 息が  息の仕方が思い出せない。

その時、背中に優しい温もりを感じ、
見るとクルミちゃんが切なそう目をして、私の身体に触れていた・・

「辛い恋になるよ・・」クルミちゃんの言っていた意味が解った。

親戚だと思っていた、思い込んでいた 
自分に都合よく・・

ざわついたクラスに藤原が戻ってくる
その横顔はさっき舞台上で見せていた顔とは違い、
私達の良く知っている顔だった。

誰かが「藤原お前なんだよ~」
「なんだよ~て何?」
吹奏楽部の子が「藤原君、藝大目指している?」
「目指してないよ、ピアノはあくまでも息抜きだから・・
それを仕事にしたくないからね」
「そうなのね 勿体ない・・」 
彼がピアノを弾けるなんて知らなかった
あんなに上手なんて知らなかった
私は藤原のプライベートを知らない
でも、一緒に弾いたあの子は知っている

9月なのに私の指先は冷たくなって感触がなくなっていく。
心も指先の様に感覚が無くなってしまえばいいのに・・
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