ロゼリアの黒い鳥
(……お可哀想に)
アリシアはロゼリアを見るたびそう思っていた。
最初に会ったときも、屋敷を出る日であってもその印象は変わらない。
痛ましく、彼女の将来を考えるだけで胸が苦しくなる。
その同情心が顔に出てしまっていたのだろう。
これから一緒にロゼリアの召し替えをする中年のメイド、デボラは声を潜めてアリシアを咎める。
「そんな顔はおやめ。旦那様に見つかったらことだよ」
そう言われてハッとする。けれどもすぐには気持ちを切り替えることもできずに、またへにょりと眉尻を落とした。
「……でも、デボラさん。本当にいいのでしょうか、このままお嬢様が結婚しても。これではあまりにも……」
「滅多なことはお言いでないよ。旦那様は決められたんだ。このお屋敷でその決定を覆せる者などいないさ。もちろん、私たちなんか口を出せるわけがないさ」
デボラは、亡きロゼリアの母の部屋から花嫁衣裳と飾り一式を引っ張り出し、憮然とした顔で言い放つ。
もちろん、アリシアもそれは分かっている。自分たちがとやかく言うのは野暮だし、こんなことを主人に聞かれたら叱られるどころの話ではない。
ましてや、ロゼリアの結婚をどうすることもできない。