ロゼリアの黒い鳥


 そしてギデオンでは揶揄いがいがないと思ったのか、カイムはくるりとその身を翻してロゼリアの顔をさかさまになって覗き込んだ。

「やぁ、ロゼリア。久しぶりだねぇ。……って言っても、君は覚えてないからなんのことだか分からないと思うけど」

 ギザギザの歯を剥き出しにしながら笑うカイムは、愉快そうにロゼリアに話しかけた。だが、彼女は目もくれずに目を閉じたままだ。

 手を伸ばそうとしたカイムを、ギデオンは鬱陶しそうに手で払う。

「何だよ~。独り占めしてないでオレにもロゼリアを見せてくれよぉ」
「よく言ったものだ。常に盗み見て、彼女が狂っていく様子を楽しそうに眺めていたくせに」
「そういう契約だもん。そりゃとことんまで楽しませてもらうさ」

 臆面もなく言ってきたカイムを睨み付け、歯噛みをした。

 こいつはこの五年、二人が苦しむ様子を見て楽しんでいた。
 ギデオンがここにいるのもカイムのおかげだが、ロゼリアがこんな状態になったのもまたこいつのせいだ。


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