ロゼリアの黒い鳥


 頷くにはしばし時間を要した。

 だが、ギデオンの命以上に大切なものはないロゼリアは、カイムの提案を受け入れる。

「じゃあ、契約成立だ」

 カイムの手の中で、白い小さな炎が舞い上がる。

 白い炎はロゼリアの身体をぐるりと取り囲み、ゆらゆらと揺れる。
 熱くはないし、身体を焼き尽くすこともない不思議な炎だ。

 本当にカイムは願いを叶えてくれるのかもしれないと、半信半疑だったロゼリアはこのときはじめて思った。

 炎が全身を囲むその前に、ロゼリアは口を開く。

「――もう一つ、対価としてもらってほしいものがあるの」

 
 悪魔との契約は交わされる。
 ギデオンは甦り、代わりにロゼリアの記憶は奪われ、壊れかけていた心は完全に砕かれた。


 
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