記念日はいつもバレンタイン
| 俊兄ちゃんはポツリポツリと話を始めた。
 最初は、お母さんからわたしの話を聞いても、いまいちピンと来なかったらしい。
「そういえば、小学校のとき、ちっちゃい子と手繋いで登校したなってくらいしか覚えてなかったんやけど」

 で、会ってみたら、優奈が自分の好みのど真ん中で、完全に一目惚れした、と。
 うーん。最初に言ってくれたら良かったのに。

「そやから、最初はカテキョ断わろうかと思ったんやけどな」
「えー、なんで?」
「いや、だって密室でふたりきりやん、カテキョって」
  彼は意味ありげな眼差しを投げかけてきた。
「俺の理性が持つかどうか、イマイチ自信なくてさ。高校生襲ったら、洒落になんねえな、と思って」
 わっわっわっ!
 こんな俊兄ちゃんの顔初めて見た。
 なんか、知らない男の人みたい。
 いっつも、落ち着いてて、余裕たっぷりやったのに。
 わたしの顔、真っ赤になってそう。
 そんなこと思ってたなんて!
 ほんまに、ぜんぜん気づかへんかった。
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