記念日はいつもバレンタイン
 それから店を出て、俊兄ちゃんに手を引かれ、3階へ。
 その階は催しスペースと駐車場の連絡口しかなく、今日は催しもなかったので、お客さんの姿はほとんどなかった。

「俊兄ちゃん、車に乗ってきたん?」
「いや、ここならゆっくり話せるかと思うて」

 エスカレーター横にあったベンチに腰をかける。
 さっきは驚きすぎて、チョコを渡すの忘れてたから、改めて渡した。

「手作り?」
「うん」
「じゃ、それは奮闘の跡やな」
  俊兄ちゃんはわたしの手の絆創膏を見て言った。
「ちょこっと傷しただけやけど」
 チョコだけにと言おうとしてやめた。
 俊兄ちゃんの眼差しが優しすぎて、なんか調子狂う。
「ありがとな。優奈からのチョコ、めっちゃ嬉しい」
  俊兄ちゃんはわたしの手を取ると、愛おしげに撫でてくる。
 それだけで、もう頭がぼうっとしてくる。
 
 けど、まだ信じられへん。
 後でジョークや、とか言われたら、立ち直れへんやん。

 わたしは「いつから好きやったん?」と間の抜けた質問をした。

「再会したはじめの日から……かな」
 ちょっと照れくさそうに、俊兄ちゃんは言った。
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