記念日はいつもバレンタイン
 俊兄ちゃんと初めて会ったんは、小学校の集団登校班。
 わたしが小1のとき、俊兄ちゃんは最上級生の小6。
 頼りがいがあって、勉強もスポーツもよくでき、班のリーダーでもあった彼はわたしのヒーローだった。
 ううん。それは現在も進行中。

 身長180cm超で飛び抜けて整った容姿の持ち主である彼は、近所でも評判の男前。
 わたしはもうずーっと俊兄ちゃんが好きで、他の男の子を好きになったことは一度もない。
 わたしがいっちゃん好きなんは、常に俊兄ちゃんだ。

 お母さんに「俊ちゃんに先生頼んだよ」って言われた日は嬉しくって眠れなかったぐらい。
 そのときほど、親に感謝したことはなかった。

 でも、いくら想っても、俊兄ちゃんはどんどん先に行ってしまう。
 中学生になり学ラン姿になった俊兄ちゃんは、めっちゃ遠い存在になったみたいで寂しかった。
 こっちはまだ5年間もランドセルを背負い続けなければいけないのにって、子供ながら思った。

 彼が高校生のとき、風の噂で彼女ができたらしいと聞いたときも、とてつもなく落ち込んだし。

 地元で一番の公立高校に入った俊兄ちゃんの後を追って、わたしも猛勉強して滑り込み、目下の第一志望も、俊兄ちゃんと同じ大学。
 でも、どんなに追っかけても俊兄ちゃんは待ってくれない。
 そんなん当たり前やけど。
 そして、今度は東京……
 きっと、綺麗な人がたくさんおるんやろうな。
 俊兄ちゃん、あんだけカッコええんやから、きっと、またすぐに彼女できるやろうし……
 そんなことを思って、気持ちは際限なく落ち込んでいった。
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