記念日はいつもバレンタイン
 バレンタインの前日、学校から帰って、初めてのチョコづくりに悪戦苦闘しながら、なんとかラッピングまで済ませ、ドキドキしながら、俊兄ちゃんのスマホに電話した。
 俊兄ちゃんが出るのを待つあいだ、心臓は大暴れするし、胃はひっくり返って口から出てくるんやないかと思ったくらい。

 4回目の呼びだし音のあと、声がした。
「なんや優奈、どうしたん?」
「俊兄ちゃん、明日、なんか予定ある?」
「明日?」

 そのとき、気づいた。
 彼女がいるかどうか知らんかったけど、もしいたらとっくに約束してるはず。
 なにせバレンタインやし。
 わたしは答えが返ってくるまでの、気が遠くなるような数秒間、祈りつづけた。
 どうか、俊兄ちゃんに彼女がいませんように、と。

 なんと、わたしの願いは通じた。
 俊兄ちゃんは「ええよ」とあっさり。
 拍子抜けして、ズッコケそうになった。
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