記念日はいつもバレンタイン
 翌日。
「ごめん。今日速攻で帰るから。センセに言うといてくれへん?」
 部活仲間に、そう言い残し、わたしは終業のベルと共に学校を飛び出し家に戻った。

 約束は7時。
 隣駅にあるショッピングモールで待ち合わせ。
 家に着いたときは、まだ約束まで3時間弱あったけれど、いろいろ支度してるうちに、ぎりぎりの時間になって飛び出した。
 
 着いたとき、俊兄ちゃんはもう来ていて、入り口の前に佇んでいた。
 うわ、遠目でも、めちゃめちゃかっこええわぁ。
手を振ると、右手を上げて応えてくれた。
 で、彼は開口一番。
「めっちゃ腹減ったわ。なんか食いに行こ」

 もう。せっかく一世一代のおしゃれしてきたのに。

 おっ、今日はなんかちゃうやん、いつもと、とか、いつもより可愛いやん、とか言うてくれはったりなんかせえへんかなって、ほんのちょびっとは期待してたんやけど……

「何食いたい? バイト代入ったから奢るでって、出どころは優奈んちやけどな」
 しばらくぶりに会った俊兄ちゃんは、もう気まずさなんてまるでないと言う感じで、普通に振る舞っている。
 でも、それが返って、俊兄ちゃんにとって、わたしは取るに足らない存在なんだと言われてる気がして、ちょっと落ち込む。

 でも、とにかく今日は言う。
 この気持ちを。
 失恋して、ドッカンと大爆発して、スッキリ終えてやるんだ。
 長年続いた、この初恋を。
 頭はこれから起きることへの不安とほんのちょっぴりの期待でパンパンになってたから、大好物のオムライスの味もよくわからなかった。
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