私の好きな彼は私の親友が好きで

デパートから少し車で走ったところにある
隠れ家的なレストランに車を停める。
「ここ、俺のお気に入りのお店。なんでも美味しいから。」
店内に入ると、個性的な格好をした女の人が
「薫さん、いらっしゃい!あら、素敵なお嬢さんと一緒なんて
明日は、大雨かしら」その言葉に厨房から男性が顔を出す
「あ、本当だ!嵐だな!」
「相変わらず失礼ですね。僕の奥さんの美月ちゃんです。」
「「え~~~~」」
「なんで、そんなに驚くんですか。」
「薫、犯罪だよ、そんなに綺麗な若いお嬢さん。
まさか。JK」
「んなわけ ないじゃないですか!」
「美月です。大学4年ですが1年留学していたので、
留年しています。一応、もう直ぐ23歳になる予定です」
私は、余りにも薫さんが犯罪まがいの言い方をされていたので
敢えて、妻では無いと言わないで自己紹介した。
「あーー犯罪じゃなくて安心したよ。でも、少し天然ちゃんなのかな?
年を重ねるのに予定でですとは、中々口にしないからね。」
クククと笑われる。
「犯罪だったら堂々とこんな、お店に連れてこないわ」
「こんな店とはなんだ!後輩のくせに!」

先輩、後輩の仲だったんですね。少し安心してホッと息をはく。

それに気が付いたのか「気を遣わせたね。高校の先輩なんだ。」
席に着き、薫さんはメニューを開きながら
「こんな店とか言ったけれど、本当に何でも美味しいから
好きな物を頼むと良い。」
薫さんはハンバーグを、私は牡蠣のグラタンを注文した。
一口食べて「幸せ~」と口にする。
「美月ちゃんは本当に美味しそうに食べるね」
あ、又 言われた・・・
確かに、私はこの人と一緒に食べる、食事が好きだ。
それに気が付きチクりと胸が痛んだ。

「また来てね」と2人に見送られ店を後にし、
車に乗り込む。
あ~お腹いっぱい。
隣を見ると、眼の下に少し翳が出来ている横顔を見つける
お見合いで24,25日を使い、昨夜から今も、私に掛かっり切り、
それでいて飯島コーポレーションの重役の責務。
疲れていて当たり前。
「ごめんなさい」
「どうした?急に?」
「忙しいのに、私がご迷惑ばかりかけて・・」
フウーと息を吐きながら
「他の人は知らないけれど、俺は忙しくても
美月ちゃんが、家で帰りを待っていてくれると思うと
やる気が出る。逆に気を遣って会わない選択をされたら、
充電できなくて余計ダメになる。だから、そんな風に思わないで。」

こんな私でも傍にいて、少しでも役に立つのですか?
邪魔になってませんか?
その綺麗な横顔に心で呟く。

あと少しでマンションと言うところで、横道に入る。
「ここ、24時までOPENしているスーパー。
欲しい物が、この時間に揃っているかは解らないけれど、
寄って行こう。」

スーパーに寄って欲しいと言ったけれど、お腹も一杯で満たされているし、
色々と買い物もした、今日一日働いてきて疲れている人が
そこまで覚えていてくれたことが、単純に嬉しかった。
「薫さんは朝ご飯はパン派ですか?お米派ですか?」
「選べるの?」
「勿論です!」
「今朝はパンだったから、お米が良いね~」
「じゃあ、お米と、お味噌は絶対に忘れないで買って行きましょう。」
「美月ちゃん、いつか魚のムニエルとポテトサラダも作って。」
(うん???心に何か引っかかる・・)
「良いですよ。」そうは笑顔で答えたけれど・・・
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