私の好きな彼は私の親友が好きで
月曜日に帰宅したら、何時もパタパタとスリッパの音を響かせ向かに出てくる
ウサギちゃんが顔を見せない・・お風呂?と思いながらリビングの扉を開けると
ダウンライトが仄かに点いているだけで、ウサギちゃんの姿は無かった。
珍しく、部屋の真ん中に彼女のバックが置いてあった。
こんな事は今までに無かった事で吃驚するが、体調が悪いとメッセージが
あったが、ここまで酷いとは思わず心配になる。
寝室の扉を静かに開けると、隅っこで丸まっている美月を見ていたたまれない
気持ちになり、声を掛けるが反応が無い・・社会人として少し
余裕が出てきているし、梅雨が明けてから急に暑くなったのも一因だろう・・
そう思い、寝室を後にした。
シャワー浴びて、寝室のベッドに起こさないように潜り込み、
抱きしめようとした時に、ピクンと身体が跳ねる。それは拒絶に似ていて、
トクン、その空気に気が付かないフリをして
隅に寝ている美月を優しく抱きしめた。
翌朝、目覚めた時に、妻の姿は家の何処を探しても居ない、その代わりに
無機質なメモが1枚ダイニングテーブルに残されていた。
今まで、こんな事は1度も無かっただけに、ジムにも行かないで、
スマホをコールするが、何度掛けても「電源が入っておりません」
の無機質な音に撥ねかえされる。
メッセージを送るが勿論、既読が付かないイライラしてソファーに座り込み、
途方にくれ、迎えがくるまで何もせずに、ソファーに座るしか出来ない。
愛する妻から返信があったのは、会社についてからだった。
しかもスタンプも何も無い、無機質な文。
昨日のランチ時までは可愛いメッセージが届いていたのに・・
昨日、遣り取りしたメッセージを見返しても、何も答えは無い・・
でも、明らかにおかしい・・
こんな時に限って、接待やらトラブルで早く帰宅できず、イライラ?
不安?が増す。こんな事人生で初めてで、対処に苦慮し、秘書の佐伯に
冷ややかに「仕事して下さい」と説教される始末。
接待も和食だったら折詰を持ち帰り、美月と食べれるのに
フレンチだったりする。
そして、朝起きると温もりの無いベッドに取り残されている
寂しくて、苦しい。
美月を手に入れた喜びで、盛りの付いた中学生のように
毎晩、毎晩 美月を求めるから嫌気がさしたのだろうか?
会社に若くてイケメンがいたのか?
そんな、とりとめのない妄想が頭をクルクル回る。
俺が強引に美月をモノにした・・
俺ばかりが美月を愛していて、美月はイギリスに帰りたくないだけで
結婚した・・そう、合点がいき苦しくなる。
それに、抱きしめた時の反応、寝る時に身体に回した手に感じた違和感・・・
そうだ美月を後ろから抱きしめた時に指輪が右手にあった。
昨日も、トクン、トクンと心臓が嫌な音を立てる
手放したくない。一人ではこのベッドは寂しすぎる。
もう、美月の居ない生活なんて考えられない・・
美月・・美月・・