私の好きな彼は私の親友が好きで


翌日も、そこに飯島の姿を見て、声を掛けずに、同期の綺麗な
横顔に魅入っていた。
昨日と同じ時間に又、同じように声を掛ける。昨日と同じ顔で
挨拶されたことに胸が軋んだ理由が解らない・・解りたくない。

3日目。又そこに座って、空間を眺めている。
見ていて気が付いた。彼女には景色も、人も何も目に入っていない事に・・
(君にそんな顔をさせる原因はなに?)そう問いたいが
「関係ないでしょ」と言われるのが怖くて、
「今日は日差しが強いね。」と口にするにとどまる、
右手を自分のオデコの辺りで翳を作り、
「本当にお日様は凄いね」と口にした君の薬指に嵌っている
石の輝きに、思考が停止する。
確か前に、その指輪の事を同期で比較的飯島と一緒に行動している
村林が聞いていたぞ・・思い出せ!
そう、村林がランチの食堂で「その指輪」って指さして・・
その時、飯島は・・・そうだ「上手に出来ているよね・・」って言ったんだ。
だから、皆でファッションリングなんだと・・・
でも、お日様の光を浴びて、輝くその石は、指輪をその石が一周しているそれは
イミテーションなんかじゃないのは素人の自分が見ても解る。しかも2本も・・・
飯島はその指輪の贈り主を想って、ここに居る。
そして、その相手は飯島を独占欲むき出しで愛している。

岩原は自分の恋心に気が付き、そして、一瞬で失恋した。
「秒で失恋って・・」
そんな指輪くれても、飯島をこんなに苦しめているなら
外せば良いのに・・俺が代わりに違うのをプレゼントしてやるのに・・

そんな、事を今、口にしても、飯島には耳に入らないだろう
だから、隣を静かに歩く。
< 92 / 105 >

この作品をシェア

pagetop