モカ
 美紀は、純粋さ、無邪気さを愛していた。いや、それに執着していた。そして、自分は汚れてると感じていた。
 それは高校生のとき、純粋な気持ちで、ある人のことを助けていた。それは、自然なものだった。そのうち、自分の中に生まれた何か。何だか不純なもの。優しくする優越感みたいな・・・。
 その人は、治らない病気だった。なのに昔のままで、最後まで優しかった。その人は優しさ、純粋さ、人を思う気持ちを貫き通して去っていった。すごいと思った。見せつけられた。そして、自分との落差に、美紀の気持ちは、混乱した。長い長いその人との関係。愛すべき人の人生の最後。その人は何を感じただろう。同時に、自分を軽蔑した。深く傷ついた。そして、思いは残った。それが始まりだった。
 10年余りが経っていた。
 美紀、29歳、今年の11月27日が誕生日だった。美紀の内側は、何かにずっと苦しめられていた。
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