カレシとお付き合い 番外編2
✳︎


森君は、実家の美容整形医院を継ぐために、医学部に通い中。
医学部って、忙しいみたいだ。
それはわかってる。
森くん自身も、とまどってた。
メールでだけど。

あれ?
会う時間なくない?

ってかんじ。
お互い、会わないつもりなんて全く予期してなかったのに「あれあれ? 」と思う間に、全然時間がなくて、実は私も1ヶ月ぐらい会ってない。

そんな中で、綺麗な女性と親密そうな姿だった。

不安ばかり大きくなって、森君は焦ってるような文面で、そんな時に、この占いで、私は最悪な気持ちになっていた。
もう、命がかかってるみたいに、会いに行くしかないとしか思えなかった。
講義中だろうが、実家中だろうが、何時間待ってもいい、1分でいい、一目会わないといられない。

紬ちゃんも同じかんじだって。

辻本くんは、理工学部で、なんだか学校に寝泊まりするぐらい忙しいらしい。
しかも、そんな時に、辻本くんは学校を抜け出して、一昨日ちょっとでも会おうと紬ちゃんの家に来てくれたそうだ。

なのに!

運悪く紬ちゃんてば、飲み会に行ってて、いくら女子しかいなかったって説明しても、辻本君の不機嫌がなおらなくて、メールがそっけない。ジリジリしていたとのこと。
涙を浮かべて、そんな話を電車でして、お互い励まし合って、私達はそれぞれの彼氏の元に、いざ!


✳︎


えっと。
医学部。
入学式前に、1度森君に連れてきてもらった。
ここなんだよって。
このへんが、校舎の入口。
講義時間中だからか、なんか静か。
こんなところ、教室までのぞきには行けそうもない。
待てば出てくるかな。
メール送ってみようか。

先日の森君の最寄駅、
『うふ、来ちゃった』の最悪の結果。
女性と歩く森君の目撃という⋯⋯ 。

じんわり涙が浮かんだ。

高校の時、
春休み、

毎日会っていたのは、本当に贅沢な時間だったんだね。
元カノと話してたって、彼が他の女の子に告白されたって、目の前の出来事だったし、すぐに話せた。
だのに。
こんなに忙しくなって、
全然会えなくて、
聞けなくて、
辛くて、
彼すら疑ってしまう。

医学部が忙しい事に、グズグズ言うほど馬鹿になりたくない。

私と一瞬でも会う時間がない? とか思いたくない。

いや、ご飯ぐらい食べる時間あるでしょ? とかモヤモヤしたくない。

ちゃんと自分の時間を有意義に過ごせる人になりたいのに、彼と会わない時間も彼のために自分を磨いていればいいのに、こんなことしてる。

「1ミリも森君の生活は疑ってない⋯⋯ よ⋯⋯ 」

と、小声で自分に言ったところよ。
目の前。
現実?

あの人、森君じゃない?

えっ?

3日前と同じ人。
すごく綺麗な女性と歩いてる。

背がすらりと高い。170センチぐらいありそうな、整った顔に、ツヤツヤの茶色い髪に、すごい出るとこ出て、キュッてしまってるスタイル、派手目なお化粧に、大人な雰囲気、知的で、聡明そうで。

何より2人の雰囲気が似ていて、すごくお似合いって言葉がぴったりくる。

『彼氏の裏切りに注意』

そんな星占い思い出してはいけない。

だめ、私、思い込んじゃだめ。

高校の時だって、そうだった。
勝手に疑ったりしてしまった。
そんな事はもうしないよ。
誠実な彼を信じるんだから。

でも、心臓がどくんどくんして、血の気がひいて、どんどん涙が出てきた。
泣いちゃってる。

私と会う1秒の時間もない。

私に気がつかない。

行っちゃやだよ。

通り過ぎてしまう。

その時、フッと何かに感づくように森君が振り返って、


「えっ? 」


と大声を出した。
となりの女の人を忘れたかのように、


「あんじゅ! 」


と甘く私の名前を発音して、すごく、急いで走ってきた


「どうした!
なんかあった⁈ 」


気がついたら、森君の腕の中だった。


「会いたかった! 」


ぎゅーっと強く強く抱かれる。

星占いも、一緒にいた綺麗な女性も、ちょっとモヤモヤの気持ちも、寂しかった気持ちも、全部森君の気持ちに洗い流されるみたいに、


「森くん⋯⋯ 」


涙声になってしまい、余計森君に抱きしめられる。
髪に森君が顔を埋めてきて、そのまま耳元まで唇がおりてきて、


「あんじゅ」


とささやかれた。
森君が私にしがみついた。
私も負けずにしがみついて⋯⋯ 。

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