契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 もしかしてさっきの会話きかれてた?
 だとしたら姉妹ふたりで言いたい放題言ってしまって気を悪くしたんじゃないだろうか。渚は、恐る恐る瀬名の顔色を伺うけれど、その表情からはなにも読み取ることはできなかった。
 瀬名が視線をシチューの鍋に移して首を傾げた。

「もしかして、夕飯を作ってくれた?」

「あ、はい。キッチンを使っていいって言ってくださったので……」

 どうやら彼にはさっきの会話は聞かれていなかったようだと思い、渚はホッと息を吐いた。
 そして嬉しそうにシチューの鍋を覗き込む瀬名に向かって口を開いた。

「先生、さっきは言いそびれましたけど、しばらく置いていただく代わりに家事は私にさせて下さい。もしよろしければ、食事の支度も。お口に合うかどうかはわかりませんけど」

 それくらいでは家賃にも満たないかもしれないけれどそれでもなにかはしなくては。
 そんな渚を瀬名は少し意外そうに見て、でもすぐに首を横に振った。

「そんなこと気にしなくていいよ。掃除も洗濯もハウスキーピングを頼んであるからやる必要はない」
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