契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
期間限定の恋心
「きゃー冷たい!」

 キラキラと輝く川のせせらぎに足を浸して、渚は思わず声をあげる。

「ほら、石があるから気をつけないと」

 和臣に注意されても構わなかった。

「大丈夫ですよ。うわー本当きれい。あ、魚がいる! 和臣さん、あそこ!」

 東京では見られない光景に渚は夢中になる。
 和臣がそんな渚に苦笑しながら川岸に腰を下ろした。
 帰省二日目のこの日、渚は近くの川へ和臣と共にやってきた。
 和臣の家族がやっている農作業は渚にとっては興味深いことの連続でいくら見ていても飽きない。
 だが一応は新婚夫婦という設定で来たふたりに和臣の母が気を遣ってくれて、少しこの辺りを案内してもらうことになったのだ。
 山に囲まれた田んぼ道を和臣ふたり歩きながら、渚は不思議な気分に陥っていた。
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