契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 和臣と結婚しなかったら、自分は一生この土地に来ることはなかっただろう、そんなことを考えて。
 東京から新幹線で二時間。のどかな田園風景の中にあるどっしりとした屋敷が和臣の実家だった。
 到着してすぐ、その立派な家を目にした渚は、実は少し怖気付いた。
 和臣の実家が農家だと知り、嬉しくなって一緒に帰省することにしたものの、もしかしたらすごく恐れ多いことをしてしまったのかもしれないと。
 和臣の実家から届いた新鮮な野菜と美味しいお米は渚の胸をワクワクさせた。
 いつも、どんな時も料理をするのは楽しいけれど、それでもやっぱりいい食材を前にした時が一番胸が高鳴るものだ。
 弁当屋を始める時は、食材にもこだわりたいと思っている渚にとっては一緒に行くかという和臣の提案は願ってもない機会だった。
 だからその案に飛びついたのだけれど……。
 よく考えてみれば、今の渚は形だけだとしても和臣の妻。
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