契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
「まったく……お前には根負けだ」

と龍太郎が笑った。

「すぐに言い返してくる千秋よりも、あまり言い返してこない渚の方が実は要注意だと母さんが言っていたが、その通りだったな」

 渚もつられてくすくす笑った。

「ふふふ、お母さんそんなこと言ったんだ」

「自分がいなくなった後のわしとお前たちの関係を随分心配しとったな。まあ、その通りだったわけだが。それにしても」

 龍太郎はそう言ってため息をついた。

「瀬名君には、親子ふたりして迷惑をかけた。よく謝っておかなくては」

「あ、和臣さん!」

 渚は声をあげた。

「お父さん! 和臣さんは……」

「わかっておる!」

 龍太郎が渚をじろりと睨んだ。
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