契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
「どうせ全部お前が言い出したことだろう。それを彼がかばって……いやでも、彼はそういう人物なのだ。目の前に困ってる人がいたら手を差し伸べずにはいられんという……わしもそれがわかっとって、彼にお前を勧めたわけだが。……本当に迷惑をかけたな」

 最後の方は少し寂しそうに言って、龍太郎は肩を落とした。
 きっと父は、誰よりもその実力と人柄を認めた和臣が、義理の息子になってくれたことも嬉しかっただと渚は思った。

「お父さん、私にはちょっともったいない人だったよ。いくらなんでも……」

 渚の目から残っていた涙がぽろりと落ちた。
 自分たちだけでは埋められなかった親子の溝、家族の問題を解決してくれた人。
 その人に、とうとう別れを告げる時が来た。
 本当に彼との結婚を終わらせる時がきたのだ。

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