契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 いい気なものね、と渚は思いカサゴの頭をダンッと落とす。
 親が決めた見合いなんて自分たちのようにうまくいく方が珍しいだろうに。

「音川さんなんかどうかしら? お父さんとは長い付き合いでしょう? いつになったら結婚するんだあいつはなんてぼやいてたのを聞いたことがあるわ」

「音川くんは……結婚しない主義じゃなかったっけ」

「だからこそよ!」

 楽しそうに勝手なことを話すふたりに少しぷりぷりとしながら渚は口を挟んだ。

「音川先生は結婚はしないって公言されてるのよ。お見合いなんてありえないわ」

 そう、実は瀬名に負けず劣らずの甘いマスクの持ち主である音川が、瀬名ほど事務所内の女子の人気が高くないのは彼が普段から"一生独身"を公言しているから。なんでも若い頃から離婚の相談を受けすぎて、結婚というものに幻滅してしまったからだそうだ。そしてその言葉通り三十八歳の今も独身を貫いている。
 いくら父が勧めたとしても、お見合い話など受けないだろう。

「だったら…」
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