契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
「なにか思い出した? 瀬名先生の裏の顔」

「あ、いや、そうじゃないの。瀬名先生はいい先生だと思うよ。たぶん……。派手な噂話あるけど仕事は丁寧な指示してくれるしやりやすい。でもすごく女性にモテるでしょう? 瀬名先生と話してると、先輩たちに睨まれるのよ。だから仕事だとしてもあまり接点は持ちたくないって思うのかも……」

 事務所のルールとして事務員は各弁護士の担当制ではないから、弁護士は、その時手が空いている事務員に仕事を頼む。
 瀬名の仕事は大抵は愛美たちが立候補してやることが多いから、あまり渚はやらなかったのだけど、最近はなぜか頼まれることが増えていた。
 苦手でもなんでも頼まれれば仕事はするわけだが、でもそんな時はあとで必ず愛美に嫌味を言われたりするのだ。
 だから瀬名に話しかけられるともはや条件反射のように身構えてしまう。そして話しかけないでほしいなぁなどという失礼なことを思うのだ。
 一方で千秋の方は渚の言葉の中の瀬名とは関係ない部分にひっかかりを覚えたようだ。
 眉を寄せて心配そうに、

「渚、まだお友達できてないの?」

と言った。
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