契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 まるで小学生を心配する母親のようなことを言う千秋に渚は呆れて首を振った。

「お友達って……。仕事なんだから、そんなのできないよ」

「でも……」

 千秋は結婚前、父の顧問先の会社で秘書をしていた。彼女自身はあまり働くのは好きではなかったみたいだけれど、信頼する弁護士先生の娘さん、ということで大切にされていたという。だから今の渚のような状況が信じられないのだ。

「でもまさかお父さんの事務所に、そんなに意地悪な人がいるなんて予想外だったわよね……」

 そう言ってため息をついた千秋が、突然思い出したように顔を上げて渚をきゅっと睨んだ。

「でも渚にも。ちょっと問題があるんじゃないの?」

「私に?」

「そう。音川さんに聞いたわよ。渚、事務所ではつーんとしてにこりともしないって話じゃない。本当の渚はにこにこしてかわいいのに、どうしてなの? そんなんじゃ、周りとうまくいくわけないわ」
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