契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
「わぁ、ガラガラじゃないか!」

 現れたのは、やはりこの事務所に所属している音川陽二(おとがわようじ)弁護士だった。

「おつかれさまです」

 渚が声をかけると、音川は頷いて渚に歩み寄る。そして思い出したように声をあげた。

「そうか今日は第一水曜日か。ランチ会だね。今月の担当は……瀬名ちゃんだったかな?」

「そうです」

 渚が頷くと、音川が大袈裟に手を叩いた。

「やっぱり! あいかわらず、瀬名ちゃんの時はいつも驚異的な参加率だよね。さっすが、うちの事務所一のイケメン弁護士! 若手のホープ! お茶の間の人気者!」

 大袈裟に戯(おど)けてみせる音川に渚はぷっと吹き出してしまう。大学では瀬名の先輩だったという音川は本人がいるいないに関わらず、いつもこんな風に瀬名をからかいの対象にしている。
 音川が渚の椅子の背もたれに、手をついてにっこりとした。

「で? 佐々木さんはなんで行かないの? 今や全国的に大人気のアイドル弁護士瀬名和臣のランチ会に」

 それを聞いて渚はぷっと吹き出してしまう。
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