契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 言いながら、ピリリとした緊張感が背中に走るのを感じていた。たくさんの人の嘘と誠を見分けてきた法の番人が和臣を見ている。視線、表情、声の調子、そのすべてから和臣の本心を読み取ることに、全神経を集中させて。
 しばしの沈黙。
 だがしばらくして龍太郎はふぅーと長いため息をつくと、

「まぁ、そうかもしれないな」

と呟いた。
 そしてゆっくりと頭を下げた。

「あの子を、よろしく頼む」

 その仕草と言葉に和臣は一瞬絶句してすぐには反応できなかった。

「せ、先生……」

「あの子は少し頑固なところがあって、君を困らせることもあるだろう。その他にも、いたらないところは多々あると思うが君がそばにいてくれるなら私は安心だ」

 そう言うと龍太郎は立ち上がり、コートを手に入り口へ向かう。そして、

「仕事中にすまなかったな」

と言い残してドアの向こうに消えて行った。
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