その一瞬を駆け抜けろ!
みんなが代わる代わるクロセンとの
挨拶を交わしている中、
わたしは、純也と
グラウンドを見渡していた。
「わたし、実は一度だけ練習終わりに、
純也が寂しそうにグラウンドに佇んでいるの、
見たことがあるんだ…」
と小さな秘密を打ち明けると、
「うん、知ってたよ」
と言われ、かえってビックリした。
あのとき、こっそりあなたの後ろ姿を
見ていたことがバレてたんだ…
と思っていると
「あれね、別に寂しかったわけじゃないよ。
本当は、俺のが先に心変わりしたんだ」
「えっ…?
あの…前に付き合ってた人とのこと…?」
「そう…
あのとき誰も追及してこなかったけど、
本当は、薫が入学してきたときから、
俺は、薫に惹かれ始めてたんだ。
それを完全に見透かされたんだ、彼女に」
「そうだったんだ…全然、知らなかった…」
「だから、あのときは、これからどうやって、
薫を振り向かせようか、考えてたとこだった。
寂しいというより闘志を燃やしてた。
でもそしたら、後ろに薫の気配がして
かなり驚いちゃって…
振り向くに振り向けなくなってたんだ」
と照れながら説明してくれた。