おとぎ話の裏側~身代わりメイドと王子の恋~



「私は、あなたの側にいたい。…好きです、大好きです。ジル」

リサの必死の告白を聞き、ジルベールは喜びを噛みしめるようにその深緑色の瞳をぎゅっと閉じる。
そして目を開け正面に立つ愛しい女性に向かい、大きく腕を広げた。

「リサ、俺と一緒に来い。俺が、君の居場所になる」
「…はい。連れていって」

いつかと同じやり取りを交わす。
しかしそれはもう決して夢ではない。

ジルベールが自分に向かって腕を広げて待っている。

リサは緊張に喉を鳴らし、大きく息を吸うと、ドレスの裾を持って待ち受ける彼の胸の中へ飛び込んだ。



―――――やっとつかまえた。


ようやく自分の元へ自らの意思で来てくれたリサを、力の限り抱き締めるジルベール。

もう離さない。
生まれた国が違おうと、身分の差があろうと、もう彼女は自分のものだ。決して誰にも自分たちを引き裂くことは出来ない。

それは例え、リサ自身だったとしても。


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