おとぎ話の裏側~身代わりメイドと王子の恋~

「リサ。君の正直な気持ちを言えばいい」

ジルベールにいつかも言われた。
もっと甘えていい、自分の意見を言ってもいいのだと。

その欲求に心が揺れる。
彷徨う視線の中に、シルヴィアの優しげな笑顔が飛び込んできた。

『いい?リサは自分の気持ちに正直になればいいの。何も心配はいらないわ』

先程のシルヴィアの言葉と、安心させるように大きく頷く彼女に背中を押され、リサはようやく真正面からジルベールと視線を合わせた。

「ジルベール様…」

後ろに控えていたリサは、1歩前に進み出る。
すると、リサの決意を待っていたように勝ち気に笑ってみせた。


「言ったはずだ。全て叶えてやると」


その強い眼差しに射竦められて、リサの心はもう彼から離れることは出来ない。そう悟った。

ドクドクと全身が心臓になったかのように鼓動が大きく響く。リサにはもう、ジルベールしか見えなかった。


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