おとぎ話の裏側~身代わりメイドと王子の恋~

「リサ?どうした?」
「あっあの…私、ジルベール様が本物の王子様ではないと思ってたから。き、緊張してしまって…」

涙目で訴えるリサを見て、ジルベールは苦笑するしかない。まさか自分が偽物の王子だと思われていたとは。

しかしこうも身分を感じて緊張されるのも本意ではない。ジルベールは昼間も言ったセリフをもう1度リサに伝えた。

「ジルと呼んでくれ。君は俺の侍女じゃない。ただ側にいて欲しいんだ」

ジルベールの言葉に目を見張り、恥ずかしそうに真っ赤になる可愛い姿を見せてくれるにも関わらず、リサは初めて会った日のように頷いてはくれない。
それがどうにももどかしく感じた。

ジルベールはそんなリサに自分の事を語って聞かせた。
思えばまだ自分たちは知り合ったばかりで、互いのことを何も知らない。

ラヴァンディエの第二王子である自分の身分。歳は21で今は騎士団の副団長として国王と兄である第一王子を護る立場にあること。王位に興味はなく、兄を影から支えていくつもりだったということ。

リサは口を挟まずに、たまに頷くように相槌を打ちながら真剣に聞いている。

さらに自身の母親の話も聞かせ、そのせいで女性に対する不信感から初対面でのあの不躾な態度になったと改めて謝罪した。

頭を下げられたリサは慌てて肩に手を添えて顔を上げさせる。

「や、やめて下さい…!気にしていません」
「思えば、もうあの馬車の中からリサが気になって仕方なかった」

至近距離で顔を上げたジルベールと視線が絡む。

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