おとぎ話の裏側~身代わりメイドと王子の恋~
「君は何よりも自分だけの家族が欲しいと言っていた。金や地位よりも、そっちの方が大切だと」
その通りなのでこくんと頷く。
「私は、両親の顔をほとんど知らないんです。幸い育てて下さる方に恵まれたので不幸ではなかったんですけど、自分だけの家族というものに憧れがあって」
これは梨沙だけでなく、リサにも通じる話だった。
「そうだったのか」
「はい」
「お互い、知らないことばかりだな。俺は君が魔法を使えるなんて知らなかった」
「え?」
何のことかと逡巡して、朝転んだ少女にジュースを渡した時の事を思い出した。
「あ、あれは…っ」
「2人のやり取りが愛らしくて、かなり癒やされた。子供が好きなのか?」
「そうですね。育てるとなれば可愛いだけじゃないでしょうけど、いつか欲しいです」
愛する人との、自分の子供。それはまさしく『自分だけの家族』。
「そうだな。俺もいつか欲しい」
「小さい子がたくさんいると、賑やかで楽しいですよ」
「あぁ」
「男の子がいいですか?それとも女の子?」
「跡継ぎに男の子も欲しいが、君に似た女の子も可愛いだろうな」
ジルベールの言葉で彼が自分との子供を欲しがっているように感じてしまい、ぶわっと体温が上がった。
「これからは、俺が側にいる」
与えられた幸せな言葉が耳から入り込み、あたたかく心地いい温度でリサの体中を駆け巡る。