ただ、一緒にいたい
俺だけのモノになって
車の中でバックミラーに目がいく。
自分の顔が見えた。
自分でもびっくりだ!こんなに優しい顔ができるのかと。
さっきまで“鬼”だったのに。

それ程、愛月の存在が俺の癒しになっているのだ。


「彰様、着きました」
「あぁ」
岸が車のドアを開けてくれた。が、開けている途中で動きが止まる。
「あ?岸!早く、開けろ!」
「あ、いえ、今は見ない方が……」
「は?どけ!」
無理やりドアを押して開けた。

外に出て、前を見た。
目の前の光景に、身体が冷たくなった。

愛月が、同僚だろうか?知らない男と話をしていた。

俺は未だかつて嫉妬をしたことがない。
そんな感情必要なかったからだ。
学生生活はなんとなく生きていたし、高校ではいじめを受けていた。
退学してからは、ずっと怒りとか苦しみだけを抱えて生きてきたから。

だから最初わからなかった。
この身体の芯から冷えていく血と、それと同時のなんとも言えない頭が沸騰する感覚。
できることなら、今すぐにこの男を殺したいと思える程の。

「あずちゃん、お待たせ!」
出来る限り、冷静に優しく声をかけた。
「あっ、彰くん!お疲れ様!」
「彼氏来たね。じゃあ俺はこれで!」
「ありがとう」
フワッと笑い、手を振る。それにさえも嫉妬した。

「あの人誰?」
「同僚の北嶋くんだよ。さっき変な人に絡まれて、助けてくれたの。彰くんが来るまで話し相手になってくれてて」
「そうだったんだね…ごめんね…俺が遅かったから」
「ううん。大丈夫だよ?彰くん待ってるのも結構好きだよ!今度は離さないって言ってくれたし」
「そっか」
愛月の頭を撫でる。
「フフフ…」
「何?」
「私、彰くんに頭とか頬を撫でられるの、大好き!愛されてる感じがして」

だったら、いくらでもしてあげるよ!俺の苦しい程の愛が伝わるなら。
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