いやな、やつ
倉持には目を向けず、微笑ましいカップルを眺めながら返答を待っていると
手首にヒヤリとしたものを感じた。
え?と思い目をやると
私の左手首にはシルバーのブレスレットが嵌められていた。
状況が分からず茫然と
ブレスレットを見つめていれば
「誕生日…おめでとう」
そんな声が降ってきた。
やけに緊張した少し固い声。
顔を上げれば、頬を染めた倉持が長いまつ毛を伏せて、照れくさそうに下を向いていた。
このブレスレット…倉持が?
「倉、持」
「な、なんだお前は…
ありがとうも言えないのか」
「え、ありがとう」