二次元に恋するアラサー女子、ついに夢主になるっ!これは夢ですか、現実ですか?!
いやいや、本当に何考えてるの。
私の推しはアズールだからね。

自分の心の葛藤が表情に出ないように気をつけながら、私は丁寧にお礼を言ってジャンクと別れた。

アズールとは相変わらず気まずいままだ。
小説のアズールはシャルロットのことを密かに慕っていた。でもそれはシャルロットにであって、私はシャルロットの姿をした菜子。

だからダメなのかな?

確かにシャルロットはもっとおしとやかで線が細くてふわふわとした男子受けのいい女の子だった。実際、オタク男子の間でもシャルロットは可愛いと人気だ。

菜子はアラサーになっても二次元に夢ばかり見てるオタク女子だもん。シャルロットには程遠いというか、似ている要素がない。

「はあ」

ため息深く城に戻ると、アズールが騎士隊の訓練を指揮していた。
凛々しい姿に思わず見とれてしまう。

やっぱりアズールはかっこいい。
涼しい顔して実は努力家なところとか、それでいて寡黙なところもいい。

でもそれは小説でアズールの背景を読んでいたからであって、今ここに存在するアズールのことは何も知らない。

そっか、何も知らないんだ。

ふいに目が合った気がして、私は思わず柱の影に隠れた。
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