エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける
私は、ずっと待っていた。
何度も使ったことのある駅の大通り、よく知る街並み。
たくさんの人が通り過ぎていく。不思議と音はまったく聞こえない。私はその場所で立ち尽くして、ずっとずっと、大好きな人を待っていた。
どれだけ待っても、まだ来ない。何度も確認する時計表示は、ちっとも進んでいる気がしなかった。
空はまだ青い。あの青に、オレンジ色が滲んだら。
夜の色が足されて群青色に変わったら。
全部の星より一番先に、一際明るい宵の明星が見えたらきっと、その方向に現れる気がした。
それなのに、人が幾人も通り過ぎていくだけで、時間は少しも進まなくて、空の色が変わらない。
いつまでもいつまでも、ここに立ってなくちゃいけないような気がして、酷い焦燥感に急き立てられた。
「雅」
よく知るその声にはっと目を開ける。息苦しさから今解放されたように、自分の息遣いが浅くて短い。
目の前に広がるのは空なんかではなく、昨夜泊まったホテルの天井で、大哉さんが心配そうな顔で私を見下ろしていた。