エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける
一瞬、自分がどういう状況なのか混乱して、思い出すのに時間がかかる。ここは、昨日結婚式を挙げたチャペルの近くのホテルだ。披露宴の代わりに家族と親せきもそろってホテルで食事会をして……夫婦になって初めての夜をここで過ごした。
「大丈夫か。怖い夢でも見たのか、うなされてた」
ぼうっとしたままゆっくりと上半身を起こす私の肩を、彼の手が撫でる。私は汗を掻いていて、それなのに冷えているのか彼の手がとても温かく感じた。
「怖い夢、っていうか、なんだかすごく焦っている夢で……」
まだ心臓がどきどきとしている。胸を押さえて深呼吸をしていると、彼が一度ベッドから降りて椅子にかけてあったバスローブを手に取った。
それを私に羽織らせて、また両手で身体を摩ってくれる。
「冷えてるな。何か飲む?」
「大丈夫」
段々と、彼がそばにいてくれることを実感して、胸の動悸が治まってきた。私の身体を摩りながら、じっと顔を覗き込む彼の表情は眉尻を下げている。大丈夫だと言ったのに、まだ心配してくれているのだ。
過保護だなあ、と思う。だけど、そういうところに救われたときがあった。大切にされている感覚が、私を確かに癒してくれたのだ。
「起こしてくれてありがとう」
――来てくれて、ありがとう。
夢の中の私が待っていたのは、間違いなく彼だと思った。