エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける
「まあ、ちょっと……食欲無い時期で。ダイエットはついでみたいな感じです。また食欲戻ったら体重も戻りますよ」
なんでもないように笑って、パソコン画面に視線を戻す。身体の不調があるわけじゃないし、ただ食欲がないだけだ。
だけど、あまり心配をかけるのも良くない。
――サチが都合の良い日に、遊びに誘おうかな。
きっかけはわかりきっている。サチには、折り返し電話があったときにいくらか聞いてもらって彼女が怒ってくれて、少しすっきりしたけれど会えてはいなかった。
気分転換にまたスポーツジムでも行って発散したら、食欲も戻ってくるかもしれない。
カタカタカタ、とキーボードの上で指を動かしながら、つい考え事をする。入力内容はそれほど難しい内容のものではないから、指が勝手に動いてくれる。
――かといって、もう話し尽くしたし。これ以上、この件で話しをしようおもなら、ただの悪口になる気がするのよね。
ひたすら、そんな内容にサチを付き合わせるのも悪い。だけどそんなことを思っていたと後から彼女が知れば『友達なのに』と怒られそうだ。
今夜あたり、メールを送ってみようかと思いちらりとスマホを見た、ばっちりのタイミングでメールのポップアップ通知が画面に現れた。しかも送信者がサチになっている。
《やっほー。さっちゃん郵便でーす》
「さっちゃん郵便?」
ひとつめはよくわからないそんなひとこと。わからないけど少し可愛らしくて、首を傾げているとふたつめ、三つめと続けざまにメールが届く。
《ある人からのお手紙をお届けします。続く》