君に2度目の恋をした。
がたんごとんと揺れる電車の中でスマホを確認する。
「あ…!!」
咄嗟に口を抑える。
隣の人にちらりと見られただけで済んだ。
ぺこりと頭を下げて視線をスマホに戻す。
やった…!昨日の配信録画が残ってる…!
わとくんはたまにの夜遅くにしか配信が出来ないことを気にしててくれて、私みたいに見逃してしまった子のために配信録画を残してくれることがある。
もちろんリアルタイムでコメントを打ちながら聞く配信が最高なのだが、録画だとしても彼の声を聞けるのはうれしいのだ。
ほわほわと幸せを感じていると、
「あ、」
いつもこの駅から同じ電車に乗ってくる彼。
朝から2重に幸せを感じる。
私は彼に片思いしてるのだ。
恋愛小説にありがちな、密かに、じゃない。
「かずとくん!」
早速声をかける。
「あぁ?」
不機嫌そうに睨みつけてくる彼。
そんな彼をも私は好きなのだ。
きっかけなんてない。
4月に初めて見かけたそのときから。
いわゆる、一目惚れ。
推しにか目がなかった私がなんでって。
そんなこと言われても私にも分からない。
ただひたすらに彼が好きなのだ。
「今日も、大好きです!」
習慣になりつつある彼への告白。
「ふーん」
この一言でさえ返して貰えたことが嬉しい。
「て、かずとくん!またクマできてるよ?」
「うん」
「うんって!ちゃんと寝なきゃだよ?確かに学年1位をずっとたもつのは大変だろうけど。」
そう。彼はテストをすれば常に学年1位。
見た目も良ければ頭も良い。
元バスケ部主将で運動も完璧。
うん。素晴らしい。
「別にそーゆーんじゃないけど」
「じゃあ眠れないとか?あ、だったらオススメの人がいるの!」
そう言ってわとくんのアカウントを見せる。
「この人はね、わとくんっていって、すっごくかっこよくて落ち着く声してるの!」
彼からの返事がない。
どんな話でもいつも相づちだけはうってくれるのに。
ちょっとしょんぼりして、
「て、かずとくんは興味ないか」
そう言って彼の顔に視線を向けると、彼は目を見開いて私のスマホの画面を見つめている。
「かずとくん…?」
彼ははっとした様子で私を見つめる。
そしてにやっと笑ったと思ったら急に近づいてきて、そっと耳元に囁く。
「この声、好きなんだ。」
「・・・あ、え…?」
本当に驚いた時って声がでないんだな。
そんなことを実感する。
金魚のように口をぱくぱくされている私に君は
「またな」
そう笑顔で残していった。
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