毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす
「……だから、私は水上くんと付き合えない」
ズキッと。
今までで一番、自分の心が傷ついた気がした。
自分の言葉で胸を痛めるなんて。
ほんと、馬鹿みたいだ。
「そういうことは僕の目を見て言いなよ」
あー、やだやだ。
どうせ出来ないことをわかってて、そうやって強要してくる人。
なにが悲しくて初恋の人を面と向かって振らなきゃいけないんだ。
今日一日、一緒に過ごして認めざるを得なくなって。
これが恋だと認めるけどもこれから先一緒にはいられない。
両想いだけど付き合えない。
なんの拷問なんだ。
「ほら、早く」
「…………」
「僕と付き合いたいんでしょ?」
「……付き合えない」
「はぁー、頑固……いや、小さな子供が駄々を捏ねてるだけだね」
頑なに目を合わさずに交際の了承をしない私は王子様からしたらそう見えるんだろう。
相変わらず顔に似合わない毒舌っぷりで、傷口に塩を塗られている気分だ。
「ここをデート場所に選んだのは失敗だったなぁ……。ということで、これあげるから。家に帰って読んでね」
はい、と手渡されたのは手のひらより少し大きめの真っ白な封筒。
これは……
「ラブレターだよ。どっちにしろ対面での言葉はガードが固い結城さんには効果がないと思ったから、用意してたんだ。書いてて正解だったよ」