雲居の神子たち
もがき苦しみ炎に包まれながら、女は火の塊となった。

最後の瞬間、
『覚えておいで、決してこのままでは終わらせない』
悔しそうな女の声が聞こえた。



時間がたち、静かになった室内。

「これで終わったのよね?」
倒れそうな私を支えてくれる尊に聞いてみた。

「わからないが、もう雲居に現れることはないはずだ」

そうか。
魔導士は因縁のある土地に再び現れることないって聞くものね。

「腕、ごめんね」

一応止血はしたけれど、だらんと垂れ下がっている様子からは元通りには見えない。

「大丈夫、利き腕じゃない」

いや、そういう問題ではないでしょう。

「稲早?」
私の名前を呼ぶ須佐の声が震えていて、私は振り返った。

戦うことに一生懸命で、須佐や八雲の存在を忘れていた。

「どうしたの?」
首を傾げた私に、須佐が私の右腕を指さす。

え?

目に飛び込んできたのは真っ赤な痣。
右の首筋から指先まで大きな痣が広がっている。

「これは・・・」

「あの女の仕業だ」

さすが魔導士、黙って消えてはくれなかったらしい。
女が最後の力を振り絞って、私に魔術をかけていったんだ。

「いつか、消えるのよね?」
「・・・」
私の問いに、尊は返事をしてくれない。

「おい」
突然、石見が大声を上げた。

何事かを振り返ると、町が燃えているのが見える。

「火事だ」
須佐の声。

本当だ。
それもかなり大きい。

その時、

「志学」
白蓮の叫び声が室内に響いた。
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