雲居の神子たち
そうだった。この二人は恋人同士なんだ。
ぐったりと横になった志学を、白蓮が抱え起こす。

「何ともならないのよね?」

白蓮には聞こえないくらい小さな声で囁いてみたが、尊は黙って首を振った。
まだ命の灯が残っていれば救うこともできたかもしれないが、すでに冷たくなった体ではどうしようもない。

「ごめんね、白蓮」
もう少し早ければ、救えたかもしれないのに。

「何を言っているの?志学は稲早を罠にはめたのよ。白蓮を救うために稲早を差し出そうとしたのよ」
それまで黙っていた八雲が、まくし立てる。

うん、わかっている。
でも、志学だって白蓮を助けたかっただけ。
大きな意味で言うならば、志学だって被害者なのよ。

「家に連れて帰って弔ってやろう」
石見が志学を抱え上げた。

この先白蓮はどうなるんだろう。
魔導士の女は消えたけれど、金で白蓮を買おうとした男は町に残っている。
これから先だって同じような目に合わない保証はない。


「一旦深山に帰りましょう」
床に崩れ落ちていた宇龍もやっと立ち上がった。

「深山に?」

「ええ、ことが落ち着けば皆さんを深山にお連れするようにと、朝倉神官から申しつかっておりますので」

ふーん。

「白蓮さん、あなたも一緒に参りましょう」
「白蓮も?」

「ええ。町は今火の海ですし、自宅に帰ってもいつまた襲われるかわかりません。一緒にお連れするのがいいと思います」

「そうね」
不思議と、反対する気にはならなかった。
< 107 / 115 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop