雲居の神子たち
「また旅を続けるのね?」
「ああ」

なぜだろう、尊と一緒にいれば何か大きなことができる気がする。
できることなら、このまま一緒にいたいと

「なあ、稲早」
「何?」

「もしこの世に神様がいて、人の運命が神様によって導かれるものなら、俺たちはまた出会うと思う」
「うん」
私もそう思う。

「俺に国を治めるだけの力があって、お前を守ってやるだけの度量があれば、このまま連れていきたいんだが、」
「尊」

私だって、あなたと離れたくはない。
でも、今の私には何もできない。

「お別れに、お守りをもらってもいいか?」
「お守り?」
「ああ」

いいわよと頷くと、「目を閉じて」と言われ、
尊の唇が私の唇に重なった。

え、これって・・・

初めて体験する不思議な感覚。
尊の温かさが、私の中に流れ込んでくる。

しばらくそのまま動けないでいた。

「ありがとう、これで頑張れる」
「うん」
恥ずかしくなった私は下を向いた。

そっと私を抱きしめた尊は
「必ずまた会おう」と言い残し馬車を降りて行った。
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