雲居の神子たち
「元々神道の国だったはずの俺の祖国は、長い時間の中で政の私利私欲にまみれてしまった。
神をないがしろにしたつもりはないが、少しずつお飾りの存在へと変わっていった。
だが、そのつけは意外なところに現れる。
ここ数十年国主の直系に男子が生まれない。生まれたとしても病を得て幼くして亡くなったり、精神病んで後継者となれないものばかり。
今も、80歳を超える長が何とか国を治めているが、それもそう長くは続かないだろう。
そこで白羽の矢が立ったのが俺で、俺は現国主の孫にあたる。
とはいえ直径男子ではなく、国主の娘が生んだ外孫。本来なら後継者とはなれない存在。
しかし、不思議なことに俺は生まれた時から霊感が強かった。
当時国に存在した巫女が『この子は主となる者。いつの日か神の力を得てこの国を治めるだろう』と告げたそうだ」

「じゃあ本当に皇子様なのね?」
「俺が神の力を宿すものを探し当てれればな」

神の力を宿すものって、巫女様とかのことかしら?

「今まで出会った中で、稲早と白蓮はその者に最も近い存在に思えた。だからかな、逃げ出さず事の成り行きを確かめようと思ってしまったんだ」

なるほどそう言われれば、尊の行動にも納得できる。
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