雲居の神子たち
朝倉神官が入ってきたことで、私は寝ていた寝具から体を起こした。

「無理をする必要はありません。寝たままでかまいません」
「はい」
返事はしたものの、寝たまま聞く話でもなさそうで、座って話を聞くことにした。

「何があったのか、覚えていますか?」
「はい」

誘拐されて、白蓮の身代わりになって男の家に行き、そこから魔導士の女にさらわれて、尊たちが助けに来てくれて、魔導士と戦った。
うん、ちゃんと記憶はある。

「今回の件、何が問題だったと思いますか?」

「勝手に深山を下りたこと」
それがすべての発端だった。

「そうですね。深山の決まりを破って勝手なことをしなければ、こんなことにはならなかったのです」

「でも私が行かなければ、白蓮はどうなっていたか」

「あなたは世の中の困った人すべてに手を差し伸べるのですか?」

「それは・・・」
もちろん、一人の人間にできることなんて限られている。でも、

「今回の火事で町の半分が焼け、何百人もの人が亡くなりました」

「それは」
私のせいじゃない。

「稲早、あなただって被害者なのはわかっています。でも、あなたは魔導士に呪いをかけられてしまった」

ああ、右腕の痣。

着物をめくって右手を見ると、痣は残ったまま。

「魔導士とかかわったものを、深山に置くわけにはいかないのです」
「えっと、それは・・・」

「稲早には深山を降りていただきます」

聞いた瞬間、キーンと耳鳴りがした。


それから三日後に、私は深山を降りることになった。
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