雲居の神子たち
木漏れ日の中、スーっと目を閉じる。

田舎の村だけあって人の気配も喧騒も聞こえてこない。
ただ耳に入ってくるのは風の音と、木々の揺れる音。
しばらくその音に耳を傾ける。

そのうちに聞こえてきた鳥の声。

ん?

かわいそうな少女?
異国の人間。
危険。
そんなフレーズが耳に入ってきた。

さらに意識を集中すると、声が聞こえてくるのは村の端。
一緒に流れ込んでくる感情は、悲しみと悲哀。
稲早がいるとすればそこしかなさそう。

「何かわかりましたか?」
頃合いを見計らって宇龍が声をかけてきた。

「うん。多分・・・あっち」
気配のした方を指さす。

「行ってみましょう」

うん。

立ち上がり、差し出された宇龍の手を取った。

「ただし」
一歩踏み出した私を振り返る宇龍。

「何?」

「いいですか、絶対に暴走しないでください。まずは私が行きますから必ず私の後ろにいてください」

はあ?
何をいまさらと言いかけて、言葉にせず睨みつけた。

「いいですね」
低い声で念押しされ、

「はぁい」
返事をするしかない。

とにかく稲早を助けたい。その思いしかなかった。
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