雲居の神子たち
まっすぐに私めがけて駆けてくるのは、八雲。
昨日の晩まで一緒にいた親友。

「どうして?なんで八雲がここにいるの?」

「それはこっちのセリフでしょう」

ああ、そうか。
確かに、姿を消したのは私の方だった。

「一体何をしているのよっ」
八雲にしては珍しい怒鳴り声。

「ごめんね、心配かけて」
事情を説明するよりも先に、まず謝った。

今この時間にここにいるってことは、私を探しに来てくれたんだろう。
きっと心配をかけたに違いない。

「稲早様」
八雲の後ろに控えていた男性に声をかけられ、顔を見て息が止まりそうになった。

「え・・・宇龍」

八雲の登場よりも、宇龍が一緒にいることの方に驚いた。
ここに宇龍がいるってことは、私の失踪が深山で大ごとになっているということ。
かなり、マズイ状況。

「ここではなんだから、入っていただきましょう」

庭先にいるにはかなり目立つ2人を前に、お母さんが家の中へと勧めてくれた。

「とにかく、入りましょう」

この場で人目につくのは本意ではないし、宇龍も八雲もこのまま帰ってくれるとは思えない。
であるならば、事情を説明するしかないだろう。
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