雲居の神子たち
その後、八雲から今回のことがすべて朝倉神官にバレてしまったとを聞かされた。
一刻も早く戻らなければ、深山を追放されるかもしれない。
だから一緒に帰ろうと、手を引かれた。

宇龍からは、今回のことがお父様やお母様の耳に入る前に戻るべきだと説得された。

もちろん私にだって2人の言うことはわかるし、そうすべきだとも思う。
でも、このままでは白蓮がひどい目にあってしまう。そのことだけは何とか避けたい。

「お願い、もう少しだけ時間をちょうだい。きっと深山に戻るし、どんな罰でも受けるから」
八雲に向かって手を合わせた。

「稲早」
八雲の困った顔。

長い付き合いの八雲だから、一旦言い出したら私が引かないのは知っているはず。
わかっているからこそこんな表情になったんだろう。

「深山を追放されたらどうするおつもりですか?」
宇龍の方は脅してきた。

確かに、その可能性もある。
深山を追放されても、私は両親のもとには戻らないだろう。
いや、戻れない。
深山を追放されたような皇女が受け入れられるはずがない。

「もう少し現実を見てください。稲早様は今、人の心配をする状況ではないはずです」
ピシャリと言われ、返事ができなくなった。

わかっている。
自分のエゴだと理解している。

「でも、私は白蓮を見捨てることができないの」
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