江藤くんはループしがち
☆☆☆

学校近くのバス停からバスに乗り、降りたのは総合病院前だった。


普段あまりお世話にならない場所なので、入り口の前で入ることを躊躇してしまう。


何年も前におじいちゃんが骨折して緊急入院することになったときに来たことがあるけれど、それ以来だった。


「江藤君の用事って病院にあるの?」


里香が聞くと、江藤君は頷いた。


そしてとまどっているあたしたちの前を歩いて院内へと入っていく。


病院の中はとてもきれいで、保健室みたいな消毒液のにおいもしなかった。


少しホッとしながら江藤君についていくと、なれた様子でエレベーターに乗り、
階のボタンを押した。


「今日は誰かのお見舞い?」


聞くと、江藤君は頷く。


「今日だけじゃないよ。毎日来てる」


そう言う横顔はとても嬉しそう。


もうすぐお目当ての人と会えるからかもしれない。


5階で降りた江藤君についていくと、503号室で立ち止まった。


どうやらここは小児病棟のようで、ドアの前にはウサギの形をした折り紙が貼り付けられていた。


入院患者さんの名前は出ていない。


それでも江藤君は躊躇することなくドアをノックした。


中から「はい」と、か細い声が返ってくる。


それは女の子の声で、あたしと里香は互いに目を見交わせた。
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