江藤くんはループしがち
☆☆☆

30分後。


あたしは自分の予感が正しかったことを知った。


病院へ到着したとき、江藤君が広い待合室のソファで座っている姿が見えたのだ。


すぐに駆け寄って声をかけようとしたが、江藤君の暗い表情を見ると声をかけることができなかった。


江藤君は真っ青な顔でうつむき、今にもその場に崩れ落ちてしまいそうだったのだ。


その様子を見た瞬間妹さんの身になにかがあったのだと理解した。


「嘘でしょ……」


里香も気がついた用で、両手で口をふさいでいる。


「き、きっと大丈夫だよ」


そう言ってみても、あたしの心臓は早鐘を打っていた。


まさか真央ちゃんが死んでしまったんじゃないか。


そんな思いがギリギリのところまで出てきている。


このまま突っ立っているわけにもいかないし、かと言って今の江藤君に話しかける勇気はない。


どうすればいいかわからずにいたとき、須賀君が視線に気がついたように顔を上げた。


その顔はさっきまで元気でおしゃべりをしていた江藤君とは、まるで別人のようだった。


「緑川……」


江藤君は弱弱しい声であたしの名前を呼ぶから、胸がギュッと痛くなった。


言いようのない切なさがこみ上げてきて、一歩前に踏み出した。


「江藤君、大丈夫?」


声をかけてみたけれど、かすれて聞き取れなかったかもしれない。
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