平成極上契約結婚【元号旦那様シリーズ平成編】
「好きな人がいるからデートはできませんって、断ったわ」

そう言うと、ひとみは安堵したように「ふーっ」とため息を漏らしてから口を開く。

「よかったわ」

「よかった……? もしかしてひとみ、佐山さんのこと好き……なの?」

「ち、違うって」

彼女は顔の前で手をブンブン左右に振った。

「じゃあ、どういうこと?」

「明日香は知らなかったのね? 佐山さんは女癖が悪くて、行員の女の子たちが彼の餌食になって泣かされているの」

「ええっ!」

思わず大きな声を上げてしまい、慌てて自分の口を手で押さえる。

「知らなかったわ」

「私も最近知ったのよ。松浦さんに相談されて」

松浦さんと言うのは貸付業務の営業のサポートをしているひとつ下の後輩だ。おとなしく可愛い。

「佐山さん、行員と深い仲になってすぐ別れ話を持ち出すらしいわ。松浦さんだけじゃなくてね」

ひとみは三名の行員の名前を言った。

私は呆気にとられて、ポカンと口を開ける。

「だから断って正解よ。いくら仕事面では優秀だろうが、私生活がだらしないなんて最低だもの」

「そんな人だったなんて思わなかったわ」

私は佐山さんの爽やかな顔を思い浮かべた。

ひとみはプルプルと長い髪をさらさらとなびかせ頭を横に振る。

「うまく立ち回っているみたいだけど、いつか大問題が起こるわよ。あ、着いたわ」
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