平成極上契約結婚【元号旦那様シリーズ平成編】
失くさないようにバッグの中へ丁寧に名刺をしまったとき、ひとみが戻ってきた。私に近づく彼女はニヤニヤしている。

「明日香―。見てたわよ。円城寺さんと話をしていたのね?」

「うん。なんか変な男性にしつこくされて、助けてもらったの」

「知ってる。スタッフに廊下に出されていたわ。ちょうど円城寺さんに助けてもらっているところに見たの。よかったじゃない」

ひとみは私に気をつかって現れなかったのだ。

「名刺もらっていたわね? 彼なんて言ってたの?」

「何かあったら連絡を。って」

「うわぁ~ いい感じじゃない」

楽観的なひとみに私は顔を顰めて首を左右に振る。

「単なる社交辞令よ。私が友人の妹だとわかったから」

「そうかしら……」

「エスコートしている綺麗な女性がいるじゃない」

「そうだけど……。結婚を約束しているわけじゃなかったら、連絡を取ってもいいと思うの」

そんな勇気あるわけない。

私は「はぁ~」と、ため息をつく。

「そんな落ち込んだ顔しないの。さてと、デザートをいただこうか」

「……うん」

私たちは少し離れたところにあるデザートのコーナーへ向かった。
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